建築雑誌 114-1439 1999年6月 p.3 草屋根の摩天楼 |
■インドネシア、ニアス島の首長の家。巨大な屋根のなかは、屋根自体を支える小屋組で満たされている。かつて棟木の近くには、天上神にささげる無数の頭蓋骨が吊り下げられていた。 |
■インドネシア、スンバ島の家屋。がらんどうの屋根裏には父系祖先の祭壇があり、氏族を象徴する祖先伝来の神器が安置されている。収穫祭にさいして、特別な資格をもつ人間だけが屋根裏にのぼり、神器を降ろすことができる。 |
それにしても驚くべきことに、人間の生活空間は建物全体の1割にも満たない。一体全体、このような建物を人の住処と呼ぶべきものかはあやしい。たいがい古くからある家のなかは昼でもうす暗く、よどんだ空気が重くのしかかる。それにもかかわらず、住人たちがじっと我慢の年月をしのんできたのは、そもそも家の主人が人間などではなく、屋根裏にひそむ霊たちのほうだからであった。言ってみれば、人間どもは、彼らの仲間入りをするまでのわずかな今生の生活を、屋根の下の間借人としてすごしているにすぎない。 1999-04-17 (Sat) 02:57 |